Media 「第2回佐賀県工業大賞」の最高賞を受賞
マイクロ波で加熱 給食配膳車開発
画期的な製品を開発するなどした企業を表彰する「第2回佐賀県工業大賞」の最高賞(知事賞)に、佐賀市の
中島製作所(中島和弘社長)が選ばれた。
病院などで利用される給食配膳車にマイクロ波で加熱する機能を搭載。熱風などで加熱する従来方式よりも
加熱のムラを抑えることができる独自の技術開発が評価された。
同社は半導体製造装置の部品などを作っているが、近年は自社製品の開発にも着手。プレス加工の技術などを生かし、給食配膳車の開発・製造を行っている。
開発した「冷蔵機能付きマイクロ波再加熱カート」は、顧客から従来の配膳車にはなかったマイクロ波の
活用を相談され、佐賀大などの技術力を受けながら完成させた。中島弘喜製造部長は「支援を受けた皆さんに
少し恩返しができたのでは」と喜ぶ。
同賞は、佐賀県工業連合会(中村敏郎会長、18社)が主催。奨励賞には伊万里鉄工所(伊万里市)、
優良賞には中村電機製作所(佐賀市)が選ばれた。
また、2012年度の日本塑性加工学会大賞などを受賞した森鉄工(鹿島市)には知事特別賞が贈られた。
(星野一裕)
マイクロ波で加熱、運搬 新給食カート開発
給食用カートの開発を手掛ける「中島製作所」(佐賀市)は、電子レンジの仕組みを応用した新製品 「再加熱カート」の試験運用を福岡県の病院で始めた。事前に調理した料理を蒸気や誘導加熱(IH)では なく、マイクロ波で再加熱する方式で、食べ物の風味を損なわずに提供できるのが特長。 改良を重ねて早期の市販化を目指す。
主に半導体製造装置部品を生産している同社は、これまで培った板金加工技術を元に、保温性や省電力化を 高めたカートを開発してきた。
同社によると、今回のカートは、電子レンジで使われるマイクロ波を利用。調理し、冷蔵しておいた料理を
提供する直前に再加熱する。 中心までしっかり温まり、時間も約25分と従来の半分ですみ、歯応えや色合いを保つことができるという。
マイクロ波方式を採用したことで、数百人分を配膳して運ぶ間に冷める蒸気式や、料理が乾燥したり、
特殊な食器が必要でメニューが制限されたりする熱風、IH式の課題も解消したという。
食器の自由度が増したため、給食用の強化磁器メーカー「匠」(有田町)に、食事に合う図柄の有田焼の
開発も依頼。中島弘喜製造部長は「食べても見ても満足できる食事を提供したい。器に続き、再加熱に
適したメニューづくりも県内で連携し、佐賀発のモデルケースとして発信できたら」と話す。
不安定な分野こそ魅力
主に病院で使われる給食配膳車(カート)。調理済みの料理を一食ずつトレーに並べて冷蔵し、
患者が食べる前に温める。「熱風式」「電磁誘導加熱(IH)式」の加熱機能を備えたカートもあるが、
熱風式は食事がパサパサして味が落ち、IH式は加熱ムラがでるなどの欠点を抱えるという。
半導体製造装置部品加工の中島製作所が開発した「冷蔵機能付きマイクロ波再加熱カート」は、
電子レンジ方式で味を損なわず加熱する「マイクロ波」式だ。
「冷たいものや温かいものを、それぞれおいしく食べられます」。中島和弘社長(66)は胸を張る。
工業系企業で造る県工業連合会が県内の工業技術のレベル向上に貢献した企業に贈る「県工業大賞」の
知事賞に選ばれている。
1925年に祖父が現在地に創業し、63年に父が継いだ。3代目の中島社長は
「工場を取り巻く環境は目まぐるしく変化した。祖父が築いた取引は父の代でなくなり、
父の取引先は私の代でなくなった」。
91年の社長就任直後、半導体製造装置で世界の圧倒的シェアを占める会社と取引を始めた。
売り上げは激増。ところが2000年にITバブルが崩壊して半減し、01年の米中枢同時テロや、
08年のリーマン・ショックのあおりも受けた。「世界がしぼむと私たちもしぼむ」と中島社長。
カートは、会社として下請けからメーカーへと一歩を踏み出す可能性を秘めた商品だ。
開発責任者は4代目となる次男弘喜さん(28)。「大量生産できる安定的な仕事は海外に持っていかれる。
不安定な分野ほど私たちにとって魅力。そこに挑戦し続ける会社でなければ」と中島社長は言い聞かせた。